テキ屋の親分を父に持つ少年ケンは、学生運動の余波が色濃く残る時代に、何を思い何と戦おうとしていたのだろうか?
東村山で事件がおこり、ケンは国分寺でつかまった。そして……
田無の警察でうそをつき、大泉の家へ帰りついたケンは、あくる日浅草へ行った。
すると……
渋谷のビルの601号室で、うそ発見器の実験をし、銀座でたくさんの人を集めた。
ところが……
日比谷でナイフ少年のはなしをきき、池袋から電車に乗って暗闇を見た。
そのあと……
新宿でネコが逃げ出し、夜の原宿で決闘ということになった。
さて……。
上野駅での別れはつらく、ケンの手にはナイフがのこった。
やるぞ、東京で。
(目次より)
主人公は、いつもとらえどころのない何かと戦っている。それが、佐野三津男さんの作品の特徴のように思う。
ケンも例外ではない。ケンが生きていた時代は、実際の子どもたちも何かと戦い、何かに挑み、トゲトゲしく生きていたのだろうか。児童書なのに児童書とは思えないくらい、するどい切れ味を見せる作品だ。
★ おひさま堂からひとこと
佐野三津男さんの代表作の1つに挙げられながら、いまだ復刊されることなく、また市場での流通も少ない稀少本です。
今とは比べ物にならないほど、東京が人々の憧れであった時代に、その東京で主人公が何を思い、何を目指して生きようとしているのか……殺人、学生運動、ヤクザまがいの登場人物、小学生向けとは思えない重たいストーリーや漂う閉塞感に(現代の小学生向け書籍との比較において)驚きを禁じえません。
書籍DATA
佐野三津男:作 中村宏:絵新刊時定価: 950円
出版社: 国土社
サイズ: 21cm / 142p
発行年月日: 1979/4/30 第3版
本の状態
・表紙カバーにはスレ・キズ・ヤケ・上部ヨレ・背に2か所(2cmと5mmほど)破れなどあります。
・函はありません。
・天地小口は汚れはありませんが、ヤケがあります。
・本文は綺麗です。